2014年04月28日

坂口安吾『二流の人』




今回は、坂口安吾『二流の人』を取り上げてみます。

なぜ、突然? と思われるかもしれませんが……
実はこの『二流の人』の主人公、今や時の人なのです。

大河ドラマ『軍師官兵衛』で岡田准一演じる主人公、
黒田官兵衛、その人なのです。
(ちなみに、『二流の人』では出家後の号である「黒田如水
 という呼び名が主に使われております)



物語は豊臣秀吉が天下を治めるための最後の戦となった
小田原・北条氏との戦いである「小田原征伐」から始まります。

ちなみに大河ドラマ『軍師官兵衛』も小田原征伐の一コマから
スタートしましたね。

とはいっても、大河のほうは、小田原のシーンは一瞬で、
すぐに時代がさかのぼり、幼少の頃の黒田官兵衛のシーンへと
移ってしまいましたが……


小説『二流の人』では、主に
小田原征伐から関ヶ原の戦いまでを取り扱っております。

官兵衛が軍師として活躍をした時代が、もう終わりに近づいている頃が
この作品の舞台となるわけです。
タイトルが『二流の人』というのも、なんとなくわかる気がしませんか?



作品には、若い頃の官兵衛を評したこんな言葉も登場します。

■世の中は己れを心棒に廻転すると安易に思いこんでいるのが
 野心的な青年の常であるが、世間はさように甘くない。


安心していると、足元をすくわれる、といったところでしょう。


このすぐ後に出てくる言葉もなかなか名文句です。

■自信は必ず崩れ、またいくたびか崩れる性質のものであるが、
 崩れる自信とともに老いたる駄馬のごとくに衰えるのは落第生で、
 自信の崩れるところから新たに生い立ち独自の針路を築く者が優等生。


若い頃に持っていた、大して裏づけのない自信は、必ず崩れるもの。
そこからどうにかして、這い上がり
自分に合った方策を見つけていくことができるのが、
すぐれた人間だ、といった感じですね。

まさに言い得て妙
すばらしい表現といえるでしょう。

むろん官兵衛は、「優等生」だったはずです。



そんな官兵衛もやがて老いていきます。
秀吉の配下で徐々に頭角を現していくのが、石田三成でした。

■昨日の老練家は今日の日は門外漢となり、
 昨日の青二才が今日の老練家に変わっているのに気がつかない。


う〜ん、これなど会社組織などでも良くありそうなことです。

自分はどんどん老いていく。ある意味、老練していくのですが、
若い人たちにはかなわない部分も出てきます。

そして、若い人、後輩たちはどんどん成長していきます。

いつの間にか、総合的に見ると、能力的には
追いつかれ、追い抜かれているのに、気がつかない……
そんな恐ろしいことも、世の中にはたくさんあるようです。



■秀吉は悟らないのだ。
 人間は子供の父になることによって、
 子供より愚かな子供になることを。


秀吉は、年をとってからできた子ども、秀頼を大事に思い、
彼を中心に豊臣家を存続させようと、いろいろ無茶なこともしてきました。

『二流の人』に出てくるわけではありませんが、
秀吉の遺書には、
返ゝ秀より事たのみ申候。(中略)
 なに事も此のほかにわ、おもひのこす事なく候
(かえすがえすも秀頼のことを頼み申します。(中略)
 何事もこの他には、思い残すことなどないです)
といった文章も出てきます。

秀頼を可愛がり過ぎたことから悲劇なども生まれるのですが、
結果的に、天下は豊臣家から、徳川家に移ります。

その時、官兵衛はどうなっているのでしょうか?


この『二流の人』で描かれている時代は、
大河ドラマでは11〜12月頃の放映になるかと思います。

とはいえ、官兵衛の一生を振り返るような記述もありますので……

大河ドラマの先を知りたくない、という人は
読まないほうがよいかもですね。

大河ドラマは見ていない、とか、
すでに「黒田官兵衛(如水)」について、ある程度は知っている、とかいう人は、
一味違う、坂口安吾版「軍師官兵衛」に触れてみてはいかがでしょうか?



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角川文庫版が安価で良いと思います。最近(?)、表紙が変わったようです。


昔の表紙のほうが好きでした……


↓ちなみに、武田鉄矢率いる海援隊のアルバムの中に、
 黒田官兵衛のことを歌った『二流の人』というのがあります。
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posted by 慈文字心 at 14:34| Comment(0) | 近現代文(日本) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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