2014年01月12日

西鶴を読む!『世間胸算用』A

昨年末、井原西鶴『世間胸算用』を取り上げました! (→こちら

この『世間胸算用』は「大晦日は一日千金」と副題がついており、
一年の決算日である大みそかの町人たちの様子を描いたものです。



そして、前回は、大晦日を舞台にした借金取りから逃れようと芝居をする男
それを上回る手法で見事債権を回収する借金取りの話を紹介しました。

ただ、これだと『世間胸算用』が、「大晦日の借金取りとのやりとりばかりを
扱った小説」のようにとられてしまう危険性があるな、と思ったりもしたので……

今回は、前回とちょっと趣向の変わったエピソードを取り上げてみることにします!
巻五 第二「才覚の軸すだれ」という話です。



(前略)<原文>世はそれぞれに気を付(つけ)て、すこしの事にても
たくはえをすべし。分限(ぶんげん)に成(なり)けるものは、
其生れつき各別なり


(大意:世の中は、それぞれが気を付けて、少々の事であっても、
貯えをしておくべきものである。金持ちになった者は、
生れつきちょっと人とは変わっているものである。)



(以降あらすじ<意訳>)

ある人の子どもは九歳から十二歳まで手習い師匠について学んでいたのだが、
その間に、使い切った筆の軸を集め、他の子が捨てたものまで拾い集めていた。

そして十三歳の春、集めた筆の軸で(すだれ)をつくり
一つ一匁(もんめ)五分で三つ売り、銀貨四匁五分を儲けたのである。

これを知った親は「我が子ながら只者(ただもの)ではない」と思い、
手習いの師匠である僧にこのことを語ったのだが、師匠はこのことを
決して褒めはしなかった。

(手習い師匠)「私はこの歳になるまで数百人の子どもを預かり、
教えてきましたが、あなたの子のように、気を働かせ過ぎる子が
結果的に金持ちになったためしはありません

自分の子ばかりを賢いと思ってはなりませぬぞ。

ある子どもは、自分が当番でない日も箒(ほうき)で床を掃き、
他の子どもたちが丸めて捨てた紙を拾い集めて、一枚一枚しわを伸ばして
毎日毎日、屏風屋へ下張り用の紙として売っておりました。

また、ある子どもは、いつも余分にを持ってきて、
紙が足りなくなった子に利子付きで貸すことをしておった。

これらは親のせこい様子をまねてみただけで、
決して自分の知恵というわけではないのじゃよ。


そういった中にあって、ある子どもは、父母が朝夕語った
「他念なく学問に精を出せ」という言葉を守り、
日夜、読み書きに励み、たいへんな能書家となった。

この子は出世するぞ、と思ったものじゃ。
なぜなら、こういう子は、一心にわき目もふらず
家業に精を出すからじゃ。

結局、親の代から続いてきた家業から商売替えして
うまくいくことは稀(まれ)なのじゃ。

手習いに来る子のするべきことは勉強である。
それを他のことに欲を出し、学問がおろそかになったのではいけませぬ。

七十歳になる、この老人のいうことが嘘か真か、
子どもたちの行く末をしかと見届けなされい!」


やがて時は過ぎた。

軸すだれを作っていた子は、その後、冬用の履物(はきもの)として
草履(ぞうり)のうらに木を付けたものを発明し、売り出したが、
長く世間に受け入れられることはなかった。

紙くずを集めていた子は、内面加工した油の器を売り出したが、
これも儲からず、大晦日に灯火ひとつという貧しい身の上である。

そして例の手習いだけに精を出していた子は、
一見トロい感じに見られがちであったが、胡椒(こしょう)を一粒入れることで、
寒い日でも硯の水が凍らなかったことからヒントを得て、
胡椒を一粒入れた凍らぬ油樽を考えだし、大儲けをしたのだそうである。

(原文)おなじおもひつきにて、油がはらけと油樽と、
人の智恵ほどちがふたる物はなかりし。

(大意;同じ創意工夫といっても、売れない内面加工の油の器と
大ヒットした油壺とでは大違い。人の知恵ほど差がつくものはないものだ)


(了)

いかがでしたでしょうか?
機会があったら、また西鶴取り上げてみますね。
いろいろ良い本も出ているようですので、興味あったら手に取ってみてください。


・前回取り上げた『世間胸算用』のエピソード「門柱も皆かりの世」はこちら
・『日本永代蔵』のエピソード「才覚を笠に着る大黒」はこちら

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posted by 慈文字心 at 16:00| Comment(0) | 古文(日本) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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